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高付加価値サービス創出支援事業


事例紹介 ー 株式会社SAL ー

「ワクワクすることがあればぜひチャレンジしてほしい」
初めてのオープンイノベーションを振り返る

明るいジムの室内で、腕を後ろに組んだ男性が微笑んでいる。後方にはトレーニング中の人々がいる。
株式会社SAL 代表取締役の清水郁也氏

さいたま市内のオープンイノベーションを加速するべく、2024年、「さいたま市高付加価値サービス創出支援補助金」(さいたま市産業創造財団)がスタートしました。
大きく変化し続ける社会の中で、基幹事業の成長の鈍化を感じたり、長期的な計画を立てることの難しさを感じる企業も多いはず。全く異なるカルチャーを有する企業とのオープンイノベーションは、どのように組織を成長させるのでしょうか?
今回の補助金に申請した企業のひとつ、株式会社SALは2019年創業で、さいたま市内でスポーツジムを運営し、また昨年よりスポーツ学童の事業をスタートした新鋭の企業です。今回SALが他社とのパートナーシップで取り組んだのは、スポーツ学童における子どもたちの送迎に関する課題を解決するための事業でした。
代表取締役、清水郁也さんにお話を伺いながら、オープンイノベーションの新たな可能性を探ります。

スポーツ学童と「子ども専用の相乗りタクシー」が手を組む

まずは、株式会社SALさんの事業内容を教えていただけますか?
清水さん:弊社はクロスフィットという形態のスポーツジムの運営をしています。最初に出店したのが大宮店、続いて2022年に浦和店をオープンしました。
または、2024年からは「スポーツ学童
LOOP」という事業を始め、浦和店のお昼の時間に子ども達が利用しています。ジムは、日中働かれている大人の方が利用する朝と夜がボリュームゾーンになりますが、その間のお昼の時間に、ちょうど学童のニーズがマッチしている感じですね。
「さいたま市高付加価値サービス創出支援補助金」を知ったきっかけは?
清水さん:もともと、さいたま市産業創造財団さんの、別のメンタリングやマッチングのサービス、Startup!SAITAMA(スタートアップさいたま)を活用していました。
当時、学童の事業を始動するにあたり、融資以外の資金調達を検討していたので、相談をさせていただいてたんです。その後、メルマガ等で財団さんから情報をいただくようになり、今回の補助金のことを知りました。
応募するにあたり、我々が直面していた課題であった子どもたちの「送迎」を軸に、オープンイノベーションの事業計画を練ることになりました。
今現在、弊社のスポーツ学童では、エリアを限定しておらず、ウェブ広告で広く周知し、まずは施設見学に来ていただいています。希望者のお話を伺うと、現在の弊社の送迎サービスで収支がマイナスになってしまうほど遠方の場合もあるので、金額を別途ご提案しています。すると、ご予算にはまらないケースも出てきてしまうんですよね。
児童の送迎は、同じ時間に違うスポットに行かなければならないので、どうしても人件費がかかります。何か手はないか、と悩んでいたので、今回のオープンイノベーションでは、東京と神奈川で「子ども専用の相乗りタクシー」のサービスを展開されていたhab株式会社さんとパートナーシップを組むことになりました。

「色々と方法を検討して、まずはトライすることが大事」

大きな窓の前で、インタビューを受けているような男性。横にはメモを取る人がいる。
対象エリアが広いと、送迎の対応はかなり大変そうです。
清水さん:さいたま市内では、学童保育を提供している事業者の分布がエリアによって全然違うので、たとえ遠方でも利用希望者がいらっしゃいます。できるだけ親御さんの送迎料の負担は軽くしたいものの、ずっと大きな課題でした。
色々と方法を検討して、まずはトライすることが大事だと思っていたので、今回の補助金のようなご支援はありがたかったです。
補助金申請のために事業計画を出される前から、habさんのことはご存知だったんですか?
清水さん:もともと、子どもたちの送迎サービスについては独自に色々と調べていました。補助金の申請期間の2024年8月の1ヶ月前くらいだったかと思うのですが、検索でhabさんを見つけて、代表の豊田洋平さんにDMさせてもらったんです。
今回の事業は、企業が協賛金として提供した費用を「タクシーチケット」として保護者が利用できる、という仕組みでした。企業さんにご提供いただいた費用に応じて、送迎の状況を管理するhabのアプリで企業広告がバナーとして出る形になります。出稿する企業にとっては、地域の親子の放課後の移動を助ける、という地域密着型企業としてのブランディングの向上にもつながることを見込んでいました。

この経験をもとに、次のアクションへとつながる

幾何学模様の壁の前で、黒いセーターを着た男性が笑顔で立っている。
事業の経過はいかがでしょうか?
清水さん:残念ながら、今のところ協賛企業さんはいらっしゃっていないのですが、システムは完成したので、長い目で協賛企業の獲得を図っていければと思っています。
成果報告の段階で色々と検証したいのですが、もしかしたら、さいたま市に「地域密着」を謳っている企業さんが少ないことや、業種として圧倒的にサービス業が多いことなども影響しているのかもしれませんが、この取り組みへの理解を深める工夫も必要だと考えています。
新規事業は千三つ(せんみつ)と言われるように、すぐには結果が見えにくいものだと思います。
一方でチャレンジしないことは可能性をゼロにしてしまうものですので、
まず挑戦し検証ができたことも成果の一つですし、検証を次の改善に活かしていただくことが大切だと思います。
清水さん:実は、今回初めてオープンイノベーションに挑戦したのですが、habの豊田さんとはトップ同士でクイックにミーティングをして、素早く実行に移すことができました。別の手法を検討する上でもオープンイノベーションは有効だと思っています。まだ検討段階ですが、今、別の企業や事業体と組んで新しい企画が動いているところで、次のアクションにつながっています。
最後に、今後この補助金を活用される企業さんへのアドバイスや、メッセージをお願いします。
清水さん:補助金の資格対象として、企業の条件を細かく絞っていないので、僕のように若い経営者にはおすすめだと思います。「高付加価値って何?」と悩んでしまう方もいらっしゃるかもしれないのですが、いい意味で抽象度の高い言葉なので、捉え方次第じゃないですか。自分たちが大事にしている思いや、個性をプレゼンしやすいメリットがあると思います。
ワクワクするようなことがあればぜひチャレンジしてほしいですし、それをサポートしてもらえる補助金があることはぜひ知ってほしいですね。